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月別アーカイブ: 2025年9月

ファーストエアー株式会社のよもやま話~必要換気量の考え方とダクト設計のキホン ✍️📐 ~

皆さんこんにちは!

ファーストエアー株式会社の更新担当の中西です!

 

前回は“なぜ換気が必要か”を俯瞰しました。今回は一歩踏み込み、設計の出発点「必要換気量」をどう決め、どんな風に“通り道(ダクト)”を整えるかを、実務寄りに解説します。現場で迷わないチェックリストも最後に付けました。🧭

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1. 必要換気量=「人+用途+発生源」で決める
必要換気量は、単に床面積で決めるのではなく、人の滞在(CO₂・体臭・呼気湿気)、用途(会議・調理・入浴・製造)、発生源(溶剤・粉じん・熱・臭気)を組み合わせて考えます。
• 人基準:一人あたりの外気量(例:20〜30m³/h/人など)を掛ける。ピーク人数に合わせるか、CO₂連動で可変にするかを検討。🧑‍🤝‍🧑
• 用途基準:更衣室・トイレ・喫煙室・厨房などは標準換気回数の目安を参照。臭気・湿気が強い場所は高めに。🚻🍜
• 発生源基準:局所排気フードで捕集できるなら、室全体の換気量は控えめでもOK。逆に発熱が大きい機器があるなら空調と連携して外気量を上げる。🔥
実務メモ:CO₂センサーを“呼吸域”に近い1.0〜1.2m高で、直吹き風の当たらない場所へ。誤検知を防ぎます。📏

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2. 換気回数の目安と計算の流れ
1) 室の用途から換気回数の目安を仮設定(例:事務室 2回/h、更衣室 6回/h、トイレ 10回/h)。

2) 室内容積(m³)×換気回数(回/h)=必要換気量(m³/h)。

3) 複数室の同時使用率を考えて“系統化”。ピーク同時を1.0とするか0.7程度でまとめるかは用途次第。📊
小さな例題
• 事務室(8m×6m×天井2.7m)→ 容積129.6m³。2回/hなら259m³/h。人数10人で人基準30m³/h/人なら300m³/h。大きい方を採用。✅

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3. ダクト設計:圧力損失と風速のバランス
ダクトの世界では圧力損失(Pa)が主役。ファンは静圧を使って空気を押し流します。損失が大きすぎると風量が出ません。逆に断面を過剰に大きくするとコスト・スペース・揺れが増えます。
• 推奨風速目安:幹線 6〜8m/s、枝 4〜6m/s、末端 2〜4m/s(騒音や結露、コストのバランスをみて微調整)。🏎️
• 損失要因:ダクト長・曲がり・分岐・ダンパ・フィルタ・サイレンサ。エルボは開先Rを大きく、分岐は45°やテーパで滑らかに。🛠️
• 均等圧法/静圧復帰法:分岐後の各支管が同じ静圧に“帰る”ように、ダクト寸法とダンパ設定を調整。職人技と計算の両輪です。🧮
実務メモ:VAV化を見込むなら最低風量時の風速もチェック。末端で1.5m/sを下回ると空気が“重く”なり、滞留やドラフト感のムラにつながります。

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4. 騒音(NC/NR)と振動の対策
音は“速い空気”と“乱れ”から生まれます。
– 末端近くでの急激な絞り込みを避ける。
– サイレンサはダクトサイズに合った長さを確保。短すぎると効かない。
– ファンとダクトの間にキャンバス、機器は防振ゴム/バネでアイソレーション。🔇

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5. 結露と保温—露点を恐れよ外気導入や冷房期のダクト壁温が露点を下回ると、結露→カビ→錆の負の連鎖。
– 冷える区間は保温(断熱)を。屋外や未空調スペースは特に厚めに。
– ドレンパンやドレン配管の勾配、封水を忘れずに。💧

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6. 施工の視点:吊り金物・点検口・意匠
• 吊り:ピッチ、揺れ止め、梁の芯を外さない。耐震ブレースは壁・梁に正しくアンカー。

• 点検口:フィルタ・ダンパ・センサ周りには必須。脚立の置き場所も含めて“作業動線”を設計。

• 意匠:見える化ダクトは継ぎ目とビスピッチの美しさが命。塗装前の脱脂も忘れず。🎨

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7. チェックリスト(保存版)
☐ 人数・用途・発生源を定義した

☐ 必要換気量と換気回数を計算した

☐ 系統図に同時使用率を反映した

☐ 風速・静圧・騒音のバランスを確認した

☐ 保温・結露・ドレン計画を入れた

☐ 点検口・メンテ動線を確保した

☐ 制御(常時/在室/CO₂)と試運転手順を決めた ✅

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8. 等価長さと“曲がりの罪”
エルボ1個で直管何メートル分?という概念が等価長さ。例えば矩形ダクトの90°エルボ(一般的なR)で直管5〜15m分の損失になることも。曲がりを1個減らす=ダクト10m短縮に匹敵するケースがあり、意匠・構造と早期に擦り合わせる価値大。🧩

9. 具体計算ミニ演習(手計算版)
• 目標風量:900m³/h(=0.25m³/s)

• 幹線:矩形400×200、風速3.1m/s → まずまず。

• ダクト長20m、エルボ4個(等価長さ40m相当)、フィルタ初期30Pa、サイレンサ20Pa、末端機器20Pa。

• 直管損失:0.6Pa/m×(20+40)=36Pa(仮)

• 合計静圧:36+30+20+20=106Pa → ファン曲線から運転点を探す。余裕を見て150Pa仕様で選定。🧪
実務メモ:“初期”と“最終(フィルタ目詰まり)”の両方で点を確認。最終時に風量が落ち過ぎないよう、ファンの余力やアラーム設定を。

10. よくある落とし穴
• 給気忘れ:排気だけ強くして負圧地獄。ドアが重い、隙間風、臭気逆流。→ 補給給気の導入、ルートの再設計。

• 点検できない:天井裏でフィルタが抜けない。→ 図面で作業姿勢まで確認。

• 結露トラップ:断熱をケチって天井シミ。→ 露点計算と保温厚の確認。

• 制御が難しすぎ:誰も触らない高機能。→ 運用者ヒアリングで“使いこなせる”設定に。🧑‍🔧

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11. 給排気バランスと圧力ゾーニング“どこを陰圧・陽圧にするか”は快適さと衛生を左右する設計の肝。
– トイレ・厨房・喫煙室:周囲より陰圧(排気>給気)。臭気や煙の拡散を防ぐ。
– 診察室・研究室・清掃済みエリア:周囲より陽圧(給気>排気)。外部の汚染空気を侵入させない。
– 共用部:中立に近く、ドア開閉時の気流を最小化。
差圧の目安は±2〜5Pa程度から。過度な差圧はドア開閉の支障・漏気増加につながるのでNG。⚖️

12. 試運転・調整(Cx)の基本
• 測定機器:アネモメータ、ピトー管+微差圧計、CO₂モニタ、温湿度計。

• 手順:系統ごとのダンパ全開→総風量確認→末端でバランス取り→制御連携(CO₂・在室)→騒音測定→記録。

• 引き渡し書:設定値(上限/下限)、フィルタ差圧のアラーム値、清掃交換の目安も明記。📋

13. 使う道具(現場の相棒)
脚立・ヘッドライト・マーカー・結束バンド・ブチルテープ・トルクレンチ・防振ゴム・レーザー距離計・吸音材・アルミテープ…。“測る、留める、塞ぐ、伝える”が基本動詞。🧳

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14. まとめのミニチートシート
• 人→外気量、用途→換気回数、発生源→局所排気

• 風速は幹線6〜8・枝4〜6・末端2〜4m/sを起点に調整

• 等価長さで曲がりの“罪”を見える化

• Cxで“図面通り”を“現実通り”に合わせ切る

• 圧力ゾーニングで臭気と清浄度をコントロール
ここまでできれば、換気設計の7合目。あとは経験値で“外しにくい形”に磨き上げましょう。⛰️

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まとめ
換気設計は数字×感覚×現場性の総合格闘技。数字だけでも、経験だけでも片手落ちです。計算で“外しにくい骨格”を作り、現場で“流れる形”に仕上げる。次回は、機器選定編として「ファン・全熱交換器・ダンパ・サイレンサ・センサー」を、選定のコツからメンテの勘所まで一気に解説します。お楽しみに!🚀

 

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ファーストエアー株式会社のよもやま話~換気って何?なぜ「空気の通り道づくり」が暮らしと仕事を救うのか🌀🏠 ~

皆さんこんにちは!

ファーストエアー株式会社の更新担当の中西です!

 

こんにちは!「換気設備工事」連載の第1回へようこそ。まず最初は「そもそも換気って何?」「なぜ手間とコストをかけてまで換気設備を整えるの?」という根本の話から始めます。結論から言うと、換気は“目に見えないリスクを外へ逃がし、必要な空気を中へ招き入れる仕組みづくり”。快適さ、健康、安全、そして建物の長寿命化に直結する超・重要テーマです。

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換気=「汚れた空気を出し、きれいな空気を入れる」こと
換気の役割はシンプルです。屋内で発生する二酸化炭素(CO₂)、湿気、臭気、化学物質、微粒子を屋外へ排出し、外気を取り込みます。人がいるだけでCO₂は増え、調理やシャワーで水蒸気が増え、清掃や製造工程では化学物質が舞います。これらがたまると、頭がぼんやりする、カビが生える、壁内が結露する、機器の寿命が縮む…といった問題に直結します。‍

よくある誤解
• 「窓を時々開ければ十分」→ 風が弱い日や冬場は期待通りに動かず、居室によっては空気が滞ります。計画的な換気は“いつでも・どこでも”必要量を確保します。️
• 「空調があるから換気は不要」→ エアコンは主に“熱”を扱う機器。空気の入れ替え(新鮮空気の導入)は別の仕事です。❄️
• 「強いファンを付ければ解決」→ 風量だけでなく、空気の“通り道”の設計が要。吸う場所と入れる場所のバランスが崩れると、隣室から臭いが逆流することも。

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機械換気の方式:第1種・第2種・第3種
日本の建築でよく使われるのは以下の3方式です。用途やコスト、気密性に応じて選びます。
• 第1種(給気・排気を機械で): 室内圧をコントロールしやすく、熱交換器と組み合わせれば省エネ・快適性が高い。病院、オフィス、高気密住宅などに。
• 第2種(給気は機械、排気は自然): 室内をやや陽圧に保ちやすく、外部粉じんの侵入抑制に有効。クリーン度が必要なエリアの前室などで。
• 第3種(給気は自然、排気は機械): 住宅や小規模店舗で一般的。コストが抑えやすいが、外部条件の影響を受けやすいので計画と運用が肝。
方式選定は“用途・気密・コスト・省エネ・メンテナンス”の総合点で決めましょう。

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「必要換気量」と「換気回数」をざっくり理解する
設計でまず決めるのは“どれだけ入れ替えるか”です。指標は2つ。
1) 必要換気量(m³/h): 人数や発生汚染物に応じた必要風量。人が多い空間や作業でVOCが出る場所は多めに。
2) 換気回数(回/h): 室内容積に対して1時間に何回入れ替えるか。例えば体臭や湿気がこもりやすい更衣室や浴室周りは高めに設定。
例:容積120m³の会議室で2回/hなら、240m³/hの換気が目安。人数やCO₂センサーと組み合わせて“可変”にするのが今風です。

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空気の「通り道」をデザインする
換気は“吸う・吐く”の2点だけでは機能しません。空気は最短距離ではなく、抵抗の少ない道を選ぶのが性質。だからこそ、以下を押さえます。
• 給気口と排気口の位置関係: 同じ壁面で近すぎるとショートサーキット(空気が室内を通らず直行)に。対角線配置や高さ差で室内を横断させる。
• 風の邪魔者: 収納や間仕切り、背の高い家具。家具配置の提案までできるのが“良い設備屋”。
• ドアのアンダーカット/ガラリ: 部屋間のバイパスを確保。逆に臭気を閉じ込めたいトイレは個室内で完結する排気計画に。
• 負圧/陽圧の使い分け: 臭気源のあるトイレや厨房はやや負圧、清浄度を保ちたい診察室やクリーンエリアは陽圧。⚖️

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省エネの視点:熱回収と可変風量
外気をそのまま入れると冷暖房負荷が増えます。全熱交換器を使えば、排気の熱と湿気を回収して外気を事前調整。さらにデマンド制御換気(CO₂/VOC連動)やVAV(可変風量)で、必要なときだけ賢く動かせます。結果、光熱費も快適性も両取りに。✨

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メンテナンスまで含めて「設計」
換気設備は“付けて終わり”ではありません。フィルタ清掃、ファンのベルト点検、ダクトのグリス堆積、ドレン詰まり…。点検口をどこに設けるか、フィルタをユーザーが触れる高さか、脚立なしで作業できるか。将来の人件費まで含めた設計が、総コストを最小化します。

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失敗事例から学ぶ(現場あるある)
• 新築住宅で24時間換気を止めたら結露でクローゼットにカビ…→ 冬でも止めない、もしくは弱運転に。️
• 厨房の排気だけ強くして店内が強負圧、ドアが開かない&トイレ臭が客席へ逆流…→ 補給給気をセットで。
• 事務所のCO₂が常に1500ppm超えで眠い…→ 会議・昼休みの人数ピークに合わせて制御、センサーの設置位置も見直し。

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室内空気質(IAQ)の指標をつかもう
実務では“体感”と“数値”を両輪で見ます。代表的な指標はCO₂、温度、相対湿度、PM2.5、TVOC(総揮発性有機化合物)など。CO₂は1000ppmを一つの目安(会議中は上がりがち)として、800ppm前後を保てると眠気やだるさが大きく軽減されます。湿度は40〜60%が快適帯。冬は加湿、梅雨は除湿と、換気・空調・加湿器のチームプレーが重要です。️

シックハウスと法規の背景(ざっくり)
日本では過去の住宅の気密化・材料の変化を背景に、「化学物質による健康被害」への関心が高まりました。その結果、居室に計画換気を備えることが一般化し、24時間換気の運用が推奨されるようになりました。法や基準の細部は用途・時期で異なるため、実際の案件では必ず最新の要件と仕様書を確認しましょう。

住宅・店舗・工場で何が違う?
• 住宅:音と省エネ、メンテの容易さが最重要。第3種が多いが、高気密住宅では第1種+熱交換の快適性が魅力。️
• 店舗/オフィス:人の出入りが多く負荷変動が大きい。CO₂連動でメリハリ運転、厨房や喫煙室など臭気源との圧力ゾーニングがカギ。
• 工場/作業場:局所排気で“発生源対策”が基本。粉じん・溶剤・熱の性状を押さえ、法令に適合させる。

ちょこっとQ&A
Q. 24時間換気は電気代が心配…
A. 近年のECファンは省エネ。弱運転で数十W台も珍しくありません。熱交換と合わせれば冷暖房費の悪化も抑えられます。⚡
Q. 花粉が多い日は換気したくない
A. 外気側に中性能フィルタを入れれば侵入を大幅に低減。差圧上昇に合わせた交換計画が必要です。
Q. ニオイが消えない
A. 通り道の見直し(ショートサーキット解消)、圧力差の再設定、ダクト汚れの清掃、活性炭の導入などが効果的。

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小さな行動が大きな差に
運用でできる工夫はたくさんあります。フィルタ掃除のリマインド、CO₂モニタの設置、ドアのアンダーカットの確保、家具の背面クリアランスの確保…。“空気の流れを想像する癖”をつけるだけで、体感がガラリと変わります。

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次回は数式も怖くない「必要換気量&ダクト設計のキホン」。現場で即役立つ“考え順序”を一緒に身につけましょう!✍️

 

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